エデンの園
展示会 at スパイラル



ディレクター:ラン・ウルフ&カリン・シャブタイ

キュレーター:タル・エレズ&アナット・サフラン

デザインには素材(自然)、工芸(文化)、技術(科学)、神話(歴史)という4つの側面があり、それによって地域性が反映されます。視覚、物体、空間の上に地域性が表現された作品は、常に変化するこれら4つのバランスの結果です。すでにそこに存在するもの、外からもたらされたもの、外の世界に向けられる地域の視点、そして国際的な枠組みを使った地域の内的な探求です。デザインはそうしたもののバランスです。

時代や場所にかかわらず、こうした4つの側面のバランスは原初的なものであり、人の起源そのものに由来します。イスラエルの国境が現在ある辺りにあり、人類最初の神話である「エデンの園」があったと仮定すると、それこそがデザインの起源だと言えるでしょう。 

スパイラルでの「エルサレム・デザイン・ウィーク」は、自然や文化、技術、神話に関する視点の相克から生まれた様々な作品に、訪れる人を誘います。それらは、あからさまにイスラエル的だったり、あるいはその要素がほとんど見られなかったり、バランスの比率は様々です。

展示の終わりにあるのは、資源にまつわる2つのイスラエルの神話が出会う庭園です。死海の塩の不気味な存在感、そして、この地域で最初に栽培され、農業革命や近代的な生活を生んだ小麦にまつわる神話です。生と死の神話が出会うこの場所で、土地固有の花々についての建築的な解釈がそれぞれの庭園に隠されており、それはエデンの園と同様、想像するだけで立ち入ることは許されれないのです。



works on view



穀倉 (2018)

ガイ・ミシュアリ&ナティ・トゥンケルロット

エデンの園


世界で最も代表的な農作物の1つである小麦は、中東で生まれました。 紀元前10,000年から現在のイスラエルの地には、安定した収穫量や、環境への高い適応力、豊かな生物学的多様性を備えた、様々な遺伝子をもつ小麦が多数生育していました。

イスラエルのワイツマン研究所とボルカニセンターとのコラボレーションで行われたインスタレーション「Goren」は、絶滅の危機に瀕する小麦を使用しています。これらは20世紀の間に、収穫量が多く、均一で、他の農作物と混じり合う能力がある品種にとってかわられました。作品から、人類史の重要な構成要素であるこの資源を、保全する努力を垣間見ることができるでしょう。

<麦提供>

北海道標津郡中標津町 希望農場 佐々木大輔

北海道札幌市 (株)Axis Innovations    矢野雅也 

北海道夕張郡由仁町  アズマ工業  東貴之 

<協力>

福島県南相馬市  アライブ 荒井大蔵 


塩の食事 (2018)

ミハル・エヴィアタル&カルメル・バル

エデンの園


イスラエルは多くの料理の伝統を持つ国ですが、典型的なイスラエル料理を定義するのは非常に困難です。 時を経て、国際的でモダンな味が地元の食材にとってかわるようになりました。

しかしイスラエルの料理史に関する研究により、2000年前の何千ものレシピが再び脚光を浴びています。 そのうち最も一般的な料理法の1つは、塩漬けによる保存でした。 それにインスピレーションを得て、5トンの塩で作られた遺跡が作り出されました。塩の中にはイスラエルの食物が埋められ保存されています。文化と伝統を保存する白く輝く塩の展示を歩きながら、歴史を体感してみてください。


小さな私的庭園 (2019)

イダン・シディ&ガル・シャリル

エデンの園


この世にできた最初の庭は“エデンの園”で、多くの言い伝えによると、陽が昇る東の地にありました。魔法でできているかのように、決して辿り着くことができず、閉ざされていました。 しかしそこに戻りたいという願いは、古代ペルシャ時代から今日まで多くの庭園を生み出し、庭園において天と地の宇宙の秩序を表そうとしてきました。
中が見えない12本の白い柱が、新しいタイプの庭、つまり物語の庭を形成します。 それぞれの柱が、イスラエルの花の物語を表しています。 一度に1人だけしか覗くことができないので、鑑賞者は唯一の訪問者であり、同時に、庭の外に取り残されたままです。


人新世(アントロポセン)の獣 (2017)

ドヴ・ガンシュロウ

エデンの園


協力:ストラタシス社

牛の頭蓋骨を3Dプリンターで作り出した作品。 頭蓋骨を、レディメイドでつくられたポスト自然な製造品としてとらえ、その可能性を探ります。
3Dプリンターで作られた頭蓋骨は、3つの部分に別れたものが接合され、異なる牛の頭蓋骨をひとつに再び組み合わせたものになっています。
これらの作品はStratasys社の「New Ancient」コレクションの一部です。


テラ・コッタ#1(2011)

タリア・ムクメル

エデンの園


砂と小麦粉を使って家庭用オーブンで焼いた作品。 よりシンプルな世界を探求したいという思いから、現代テクノロジーがもたらす多くの可能性を欠いていますが、作家は現代社会では原初的と考えられている材料と技術を使うことを選びました。手に入る材料だけを使って日用品をつくる砂漠の人々 にもヒントを得て、ユニークで個性的な容器のシリーズが生まれました。


クラフテッド・テクノロジー (2011)

タマラ・エフラット、モラン・ミズラヒ&アミット・ゾラン博士

エデンの園


(ベツァレル美術デザインアカデミーとヘブライ大学コンピューターサイエンス学科の共同プロジェクト)

伝統的なスモック刺繍の歴史に触発され、その構造、形態、質感の特性を分析。平面をオブジェクトに変えることができるプリミティブ・アルゴリズムとして、スモッキングの可能性を提案します。 現代の技術パラメーターの操作を通じて、刺繍の本来の特性を復活させ、強化し、多様な質感と形状の実用的で立体的なオブジェクトに変えようとします。


コモン・スレッド(共通の特徴)―庭の守り人 (2019)

アミール・ゾベル&イタイ・ブルーメンタル

エデンの園


Common Thread Project(コモン・スレッド・プロジェクト)は、アルゴリズム開発者のイタイ・ブルーメンタールとデザイナーのアミール・ゾベルによる1年にわたる研究の成果であり、ほとんど知られることのないエルサレムと日本にあるユニークな庭園を維持管理する人々に光を当てています。 プログラムを改編したコンピューター数値制御装置と独自に開発されたアルゴリズムを使用して、円形の木製フレームの内側に埋め込まれた471本の釘の周りに1行の糸が織り込まれ、アルゴリズム、デジタル加工、プログラム改編を組合わせた作品。

<協力>

三井宣太郎

段木秀夫

中村雅俊


マッチメイカー| CLOACK (2018)

ミハル・レヴィツキー&ジュダイカ宝石職人イリヤ・フェルドマン

エデンの園


この照明器具は、新旧技術の補完的な出会いを表現しています。3Dプリンターで製作された部分を通過する光の柔らかさと金属の硬さが、オーガニックな柄のデザインを作り出しています。

この作品は、エルサレム・デザイン・ウィークが企画し、ダニエル・ナフミアスがキュレーションした「The Matchmaker」プロジェクトの一環として作成されました。このプロジェクトは2018年に発足し、コンテンポラリー・デザインの作家と伝統的職人が共に制作、その作品をエルサレム・デザイン・ウィークで発表する企画です。


マッチメイカー| FAWAH (2018)

バル・ホロウィッツ&アラブ視覚障害者協会ほうき工房

エデンの園


室内環境で使用する家庭用芳香器具のシリーズ。 これらの製品は、エルサレムを拠点とするデザイナーと、イエス・キリストが十字架を背負って歩いたとされるエルサレム旧市街にある「ヴィア・ドロローサ」にあるアラブ盲人協会ワークショップとの継続的なコラボレーションから生まれました。 一連のフレグランス蒸留器には、目が見える人と見えない人の両方が体験できるよう設計されており、この活動の精神が宿っています。

この作品は、エルサレム・デザイン・ウィークが企画し、ダニエル・ナフミアスがキュレーションした「The Matchmaker」プロジェクトの一環として作成されました。このプロジェクトは2018年に発足し、コンテンポラリー・デザインの作家と伝統的職人が共に制作、その作品をエルサレム・デザイン・ウィークで発表する企画です。


マッチメイカー| 鳥と3匹の魚 (2019)

ムハンマド・マハルワス&竹細工職人ジアド・アル・ダッバ

エデンの園


このプロジェクトは、デザイナーと彼の兄弟が子供の頃、母親からお休み前に聞かされていた鳥と3匹の魚の物語にインスピレーションを得て、物語のイメージを表す4つのオブジェクトを表現しました。 これは、その1つである揺り木馬で、竹と藁で作られています。

この作品は、エルサレム・デザイン・ウィークが企画し、ダニエル・ナフミアスがキュレーションした「The Matchmaker」プロジェクトの一環として作成されました。このプロジェクトは2018年に発足し、コンテンポラリー・デザインの作家と伝統的職人が共に制作、その作品をエルサレム・デザイン・ウィークで発表する企画です。


マッチメイカー| 食文化 (2019)

シャディ・フランシス・マジュラトン&アラブ伝統楽器職人アレフ・サイード

エデンの園


「食べる文化」には単純で連続的なコンセプトがあります―アラブ人はナッツを食べ、ナッツは木から来ます。木は楽器に加工され、奏でる音楽は文化、すなわちアラブ人は“文化”を食べています。
このプロジェクトは、ナッツの形にデザインされたアラブの木製楽器とシリアのシルク生地で作られたバッグのコレクションです。

この作品は、エルサレム・デザイン・ウィークが企画し、ダニエル・ナフミアスがキュレーションした「The Matchmaker」プロジェクトの一環として作成されました。このプロジェクトは2018年に発足し、コンテンポラリー・デザインの作家と伝統的職人が共に制作、その作品をエルサレム・デザイン・ウィークで発表する企画です。


ニュー・ジャラ (2019)

アヴィ・ベン・ショシャン

エデンの園


この花瓶が表すものは、物と人間の関係に基づいています。その美学は地中海のデザインが持つ哲学の歴史と文化にヒントを得て、物の機能と同時に自然の素材、色、形に目を向けています。ナチュラルなピンク色で明るく、暖かみのある作品は、中東の気候や太陽の光、遺跡、風景などにインスパイアされ、すべて伝統的な職人によってテルアビブで手作りされています。